シュナイダーエレクトリックなどの大手メーカーは、よりデジタル化された生産(スマートファクトリ)への投資を進めており、ネットワークに接続されたデバイス、マシン、生産システムを使用してデータを継続的に収集・共有しています。このデータは、プロセスを改善したり、何か問題が起きた場合に対処したりするための意思決定に使用されます。人工知能(AI)、ロボット工学、分析、ビッグデータ、産業用モノのインターネット(IIoT)の技術が進展したことで、シュナイダーエレクトリックはより自律的に工場を稼働できるようになりました。これはスマート製造技術と呼ばれています。
こうした最新技術を駆使して、シュナイダーエレクトリックのスマートファクトリは、学習と適応をリアルタイムもしくはほぼリアルタイムで実行し、効率と品質の向上、それにコストの削減を実現しています。マシンビジョンの戦略的パートナーであるコグネックスは、マシンビジョンソリューションを使用して、シュナイダーがスマートファクトリの目標を達成できるように支援しています。このソリューションによって同社は、製品の欠陥検出、検査データの取得、EcoStruxure IIoTプラットフォームへのシームレスな統合を確実に行えるようになりました。また、さまざまなアプリケーションを解決する多目的なポートフォリオの利用も可能となっています。また、コグネックスは、世界規模のサービスとサポートを通じて、シュナイダーをグローバルにサポートしています。
シュナイダー:スマートファクトリの優れた展開例
2017年以降、シュナイダーは約100棟のスマートファクトリを順調に展開してきました。シュナイダーエレクトリックのスマートファクトリプログラムは、コグネックスの革新的なマシンビジョンやITソリューション、データ分析をシュナイダーのIIoTプラットフォーム、EcoStruxureを通じて製造、物流、倉庫業務にシームレスに統合することで、グローバルサプライチェーンを変革しています(EcoStruxureは、接続されたデバイスによって生成されたデジタルデータを収集・分析して、業務を最適化するために設計されたオープンなIoTアーキテクチャです)。コグネックスのマシンビジョンソリューションにより、製造効率と製品品質が向上しただけでなく、各工場のエネルギーコストが10%~30%、メンテナンスコストが30%~50%削減されました。
グローバルなマシンビジョンパートナーであるコグネックスとの提携
コグネックスは、20年以上にわたってシュナイダーエレクトリックと提携しており、2018年にはシュナイダーのテクノロジパートナープログラムに参加しています。このプログラムは、独立系ソフトウェア開発者、システムインテグレータ、および技術系スタートアップ企業を一つにまとめ、コグネックスのマシンビジョンとEcoStruxureを組み合わせたソリューション上で共同作業を行い、シュナイダーの工場と外部顧客のネットワークでの生産を最適化するものです。
シュナイダーエレクトリックのGSCヨーロッパ・データ&アナリティクスディレクターのローラン・シャントワゾー氏は次のように語っています。「コグネックスは、シュナイダーエレクトリックがデジタルトランスフォーメーションの道を歩む上での重要なパートナーです。コグネックスのソリューションは、当社の生産ラインに展開するための認定を受けており、当社の標準の一部となっています。シュナイダーとコグネックスの関係は、強力なパートナーシップに基づいています」
コグネックスの技術によってシュナイダーエレクトリックのスマートファクトリが成功を収めたことから、シュナイダーはコグネックスのマシンビジョンとバーコード読み取り技術をグローバルに標準化することを決定しました。ポイントとなった点をいくつか挙げます。
- 高精度 – コグネックスのビジョンシステムは製品の欠陥を確実に検出するので、シュナイダーは品質工程をより厳密に管理できるようになりました。
- 迅速かつ容易な統合 – コグネックスのソリューションは、標準的な通信およびネットワークプロトコルをサポートしているので、シュナイダーの生産システムに簡単に統合できます。
- 接続性 – セットアップウィザードが使いやすいため、コグネックスのソリューションは迅速かつ容易にインストール、設定、展開することができます。
- 汎用性 – プラットフォームに柔軟性と拡張性があるので、工場レベルでもグローバルな規模でも、学習と複製を簡単に行えます。
シュナイダーには、簡単な使用例から複雑な使用例まで、さまざまな使用例があります。しかし、コグネックスのソリューションは迅速に展開できるため、時間が節約され、アプリケーションをより短時間で本番稼動できます。シュナイダーは、そうした点を高く評価しています。シャントワゾー氏はこう説明します。「コグネックスのエッジ学習ソリューションは、設定が驚くほど簡単です。通常、簡単な使用例であれば、4時間以内にアプリケーションを準備して本番稼動できます」
シュナイダーの製造現場に多数ある自動検査の可能性
コグネックスは、シュナイダーのグローバルな製造ネットワークで自社のさまざまな技術を使用して、多数のアプリケーションを解決しています。
- エッジ学習が組み込まれたIn-Sight 2800:ラベル検査、欠陥分類、組立検査に使用します。
- ディープラーニング(In-Sight D900またはVisionPro Deep Learningソフトウェア):複雑な品質検査や組立検査、高度なOCR/OCVアプリケーションに使用します。
- In-Sight 3D L-4000:二次元と三次元の同時検査が可能で、XYZ位置の測定データの取得、特定の形状の有無の検査、一次元コードの読み取りを行います。
- DataMan 8700:一次元および二次元コードの読み取ることができます。
シュナイダーは、例えばフランスのシャスヌイユでは、コグネックスの技術を使用して、Tesys GSモジュラコンタクタ製品内のパッド部品とスプリング部品の品質を検査しています。以前は、従来のルールベースのマシンビジョンカメラを使用していたため、品質にばらつきがあり、許容レベルを超える不合格品が発生していました。その結果、品質に関係しないコストが増加していました。現在は、コグネックスのエッジ学習分類ツールを使用して、導体パッドの有無やスプリングアセンブリの適切さを識別しています。この品質向上に関して得られた情報から、エンジニアは製品設計を最適化することができ、運用チームは生産マシンのパラメータ調整のための洞察が得られ、品質向上につながります。
すべてのコンポーネントが適切 |
パッドなし |
シャスヌイユの工場では、もう一つのアプリケーションとして、キャビネット組立の検査があります。キャビネットが組み立てられると、基準への適合と全体の品質が検査されます。この自動検査工程は複数の部分から構成されており、キャビネット内の取り付けレールと電子モジュールの位置を特定します。これまでは、この工程はオペレータが手動で行っていました。シュナイダーはこの工程を改善するために、Cognex VisionPro Deep Learningソフトウェアを使用しました。Cognex VisionPro Deep Learningソフトウェアは、精度、効率、一貫性が向上することが証明されているからです。このステップが完了すると、各モジュールの部品番号が特定され、組立計画に照らして検査されました。
電気キャビネット筐体にあるレールの位置の特定 |
個々のモジュールの位置の特定 |
モジュールの部品番号の位置の特定 |
部品番号の読み取りと検査 |
シュナイダーはパッケージ工程にリサイクル材料を採用していますが、表面の外観には、色のコントラスト、反射、汚れなどの違いが生じます。この違いはかなり大きく、予測することはできません。Cognex VisionPro Deep LearningソフトウェアとCICカメラを使用すると、ばらつきの大きい部品でも簡単に検査できます。
シュナイダーに大きな利益をもたらすコグネックスのソリューション
シュナイダーのスマート製造技術の成果として重要なのは、製品の品質とラインの効率を向上させるために、工程とデバイスのデータを使用して製造パラメータを迅速に調整することです。コグネックスのビジョンシステム、バーコードリーダ、AIベースの技術、およびクローズドループフィードバックシステムを使用して検査を自動化すると、欠陥を早期に検出し、製造パラメータを迅速に調整できるようになります。これにより、さまざまな方法で廃棄物を削減し、高品質な製品を安定して供給できるようになります(クローズドループフィードバックシステムとは、コグネックスのマシンビジョンソリューションが提供する欠陥分類データなどの検査結果を生産工程にフィードバックして、最適化するシステムです)。
工程のドリフトの軽減
ドリフトは製造業ではよくある問題です。製造工程におけるわずかなずれが原因で、製品の属性が許容範囲外になる場合があります(機器の再校正が必要になったり、オペレータが日ごとに疲労していく可能性があります)。シュナイダーは、In-Sight 2800やVisionPro Deep Learningソフトウェアなどのコグネックスのソリューションから得られた結果データを使用して、工程のドリフトを管理し、製品の品質を望ましいレベルに維持しています。
納入速度の向上
シュナイダーは、生産とサプライチェーン工程を効率化して、納入も高速化しています。コグネックスのIn-Sight 2800、In-Sight D900、VisionPro Deep Learningソフトウェアといったマシンビジョンソリューションを使用して、手動の検査ラインを強化したり、検査工程を完全に自動化したりすることにより、高品質の製品を効率的に生産して納入することや、継続的な改善のためにデータを取得して保存することができます。
製造効率の向上
シュナイダーは、収益性と効率性を高めながら、持続可能性という根本的な課題に取り組もうとしています。コグネックスのマシンビジョンとAIベースの技術を使用することで、シュナイダーのスマートファクトリは、製造業務の効率をエンドツーエンドで効率化します。
- エネルギー効率 – 電力の消費量とコストを従来より優れた方法で可視化、管理、最適化します。
- 処理効率 – チームはより高度なクローズドループ測定、より高いスループットに対応した運用ツール、およびより高速な処理を使用して、少ない原材料からより多くの製品を生産します。
- 資産パフォーマンス管理 – チームは分析を使用して、工場全体での資産の使用方法を最適化できます。これにより、生産量を向上させ、計画外のダウンタイムを最小限に抑えることができます。
スクラップと原材料消費量の削減
コグネックスのマシンビジョンソリューションは、スクラップを削減したり、製造および設計工程を最適化するデジタル検査データを提供したりしてシュナイダーを支援しています。これにより、原材料の消費量と機械の消費電力を削減することができます。
今後の計画とプロジェクト
シュナイダーとコグネックスの協力関係は20年以上にも及びますが、今後も両社はパートナーシップを継続し、シュナイダーの工場と配送センターを一層効率化する予定です。シュナイダーは、マシンビジョンによる品質管理を製造業務内にさらに実装し、工程の早い段階で品質を確保し、不合格品を削減し、持続可能性のメトリックスを改善する予定です。
チャントワゾー氏はこう付け加えました。「プロジェクトを実現するために、私たちはパートナーとして、コグネックスに信頼を置いています。ディープラーニングによってさまざまな改善に取り組むことに成功しましたが、お客様を守るためにさらに踏み込んだ検査を行いたいと考えています。私たちは、サプライチェーンを改善するために常に協力していきます」
シュナイダーはまた、コグネックスのマシンビジョンとAIベースの技術を使用して生産ラインの効率を評価し、製造工程内の品質リスクを低減する予定です。これにより、製品が最初から正しく生産されるようになります。こうした取り組みの結果、シュナイダーが廃棄物や、材料とエネルギーの消費によって地球に与える影響が低減されます。